経営情報学部では2023年度秋学期のアクティブ・ラーニングプログラムとして「AL実践 自動運転と社会」(担当教員:樋笠尭士専任講師)を開講しています。11月28日の講義ではゲスト講師として株式会社第一生命経済研究所 取締役 ライフデザイン研究部長 主席研究員の宮木由貴子様をお迎えし「自動運転技術の『社会受容』を考える」のテーマでご講演いただきました。宮木様は消費スタイル・消費者意識、ウェルビーイング、モビリティと暮らし等について研究されており、内閣府、消費者庁、経済産業省等の各種委員を歴任されていらっしゃいます。
最初に新しい技術の社会実装において重要な観点としてWHAT、WHY、HOWがあるとされ、自動運転においても人々の情報量を増やし認知度理解度を上げる第1フェーズ(WHAT、WHY)、人々の行動を喚起する第2フェーズ(HOW)のプロセスを踏む必要があるとされました。第1フェーズの具体例として、運転免許返納前後での移動満足度の違いのデータを示し、地域のモビリティ維持・創出に向けては運転寿命の延伸と代替交通の創出の両輪で進める必要があるとされました。また第2フェーズでは、課題解決に向け、地域ごとの状況に応じた内発的なアイデア出しを促すことが重要である点が述べられました。
具体的な事例としては、沖縄県北谷町、茨城県境町での自動運転バスについてご紹介いただき、地域住民が仕組み作りに積極的に関与することが成功の秘訣であると強調されました。自動運転の円滑な走行のために、近隣住民の路上駐車が激減したり、住民がバス停用に私有地を提供したり、高齢者専用感がなく子どもたちに人気があるデザインにより車両が地域のアイコンとなったなど、消費者の関心と自発的な行動を喚起することが成功事例とされました。
最後に、社会的受容の成功例から見て取れることとして、どううまくやるか(Well-doing)といったやり方の追求(to do先行)の前に、どうありたいか(Well-being)といったあり方を描く(to be 先行)ことが鍵となる点と、「勝ち組競争」から「価値組み共創」へ発想を大きく転換させ、多様な価値を組み合わせて皆で一緒に社会を創る姿勢がこれからの世の中に望まれるとされ講演を締めくくられました。
質疑応答では、「市民からアイデアを募るために、どのように人を集めたらよいのでしょうか?」、「サービスカーが地域に受け入れられているのはどのような背景があるのでしょうか?」、「自動運転車の普及は自動運転車を使わない人にとってデメリットになるのではないですか?」などの質問があり、活発な意見交換が行われました。
株式会社第一生命経済研究所はこちら
関連ニュース
-
民間企業との連携企業
との連携民間企業やNPO等広い意味でのビジネスないしプライベートセクターを指し、経済活動に直接結びついていくという意味で重要な役割を担っています
-
政府や自治体
との連携自治体
との連携政策目的の達成を使命とし、地域産業等の現場ニーズに即した技術開発・技術指導に加え、研究開発基盤形成や制度改善にも重要な役割を担っています
-
大学や研究機関
との連携教育・
研究機関
との連携教育と学術研究に加え社会貢献をも使命とし、優れた人材の養成・確保、未来を拓く新しい知の創造と人類の知的資産の継承等の役割を担っています
-
地域住民やNPO
などとの連携NPO、
地域団体
などとの連携地域住民、地域団体、NPOなど多様な主体を含む概念で、その地域毎に様々な状況・課題があり、各地域の実情にあわせた取り組みが求められます