経営情報学部では教員、研究者が相互の研究内容を理解し合い、学際領域の研究の高度化を目指すべく「研究サロン」を研究活性化委員会が主催し、定期的に開催しています。10月25日に開催された「研究サロン」では、中庭光彦教授から「コモンズ問題から政策のデザインアプローチへ」のテーマで研究動向についてお話をうかがいました。当日は対面、オンラインのハイブリッドでの開催となり教職員14名が参加しました。
中庭教授は、これまでに「高齢者の生きがい支援研究」、「コミュニティネットワークとしてのNPO研究」、「多摩ニュータウン研究・郊外研究」等のテーマを手掛け、現在は「水文化研究」、「デザイン志向企業家と公共(地域)政策デザイン手法の研究」の2テーマについて研究を発展されているとのことです。
一見すると多様なテーマですが、これまでの研究に共通しているのが、コモンズの悲劇で知られる「コモンズ問題」。この分野の大成者はエリノア・オストロムですが、彼女はコモンズが持続する条件までは導きだしました。しかし、コモンズにいかに価値を創出するか、さらに、コモンズ保全者がレントシーカーにならない条件は何か、そしてメンバーがマルチステークホルダーの場合のコモンズ管理の合意形成をどうするか。この三つの問題は残されました。この問題に、エスノグラフィーの手法で取り組まれてきたとのことでした。
コモンズの論理は、現在ではまちづくりやインフラ等の人工資源にまで援用されています。コモンズの管理組織と言えるコミュニティをデザイン志向で構築していくことが重要となります。そして、古典的エスノグラフィーとシン・エスノグラフィー、これまでの研究で明らかになっている研究成果などについて解説していただいた後に、現在取り組まれている領域として、コミュニティバージョンアップの枠組み、公共政策へのデザインアプローチ適用についてお話しいただき、「多様なコミュニティに寛容な市民社会」という公共性を打ち出したいとの言葉で締めくくられました。
最後に、長きに渡り研究のフィールドとされている飛騨高山について、木工家具、生産・流通・売り方のデザイン、保全から利用への変化、文化、ソーシャルエコロジーなど、デザイン志向企業家ネットワークによる価値創造構造について実例を交えてご紹介いただきました。
質疑応答では、エスノグラフィーで話を聞く相手を決定する基準、コモンズに関する倫理感の日本と西洋の違い、コモンズの考え方を多摩大学に当てはめた場合の問題解決法、エスノグラフィーにかかる時間の捻出法など、活発な議論が行われました。
中庭教授は経営情報学部で「地域ビジネスプランニング」、「地域政策プランニング」等の授業を担当されています。
※今回の研究サロンでは、感染症予防対策を十分に講じたうえで、報告者にはマスクを外して報告していただいております。
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