第14回関戸地球大学院に経営情報学部の水盛涼一准教授が登壇し「内側から見る中国~誕生から受検そして老後まで~」をテーマに講演しました。関戸地球大学院は「連携に関する基本協定」を締結している多摩市内6大学の教員による多様な講義を開講しており、2023年度は10月~11月に全7講で構成され、多摩市と日野市の連携事業である「たま学びテラス」にも位置付けられています。水盛准教授は11月21日の第6講に登壇。当日は関戸公民館(ヴィータコミューネ)に48名の対面での聴講者と44名のオンライン参加者がありました。
講義の前半では「出生から入試へ」とうたい、中国での結婚に必要な手続き、一人っ子政策に代表される人口政策の移り変わり、低下し続ける合計特殊出生率、そして少子化とともに過熱する早期教育と1,200万人にのぼる大学入学共通試験の受験者数などについて説明がありました。大学入学共通試験はマークシートと記述式が併用されており、特に記述式に重きが置かれているとのことですが、採点に膨大なマンパワーが必要で、北京市では1,000名の大学教員・高校教員・大学院生が10日以上かけて処理しているとのことでした。また、詰め込み教育からの脱却も進んでいる半面、難解な長文記述が求められることもあるとのことです。教育に用いられている教科書からは愛国主義の色彩は強いものの、抗日を助長するような内容は少ないとのことです。一方で、最近の若者の流行語からは「意欲なし」、「老いた親のスネカジリ」、「寝そべり勝ち」、「あえて行動しない」など、無気力感が漂っているとのことでした。
講義の後半では、若者たちが大学卒業後に就職する企業と党との関係について解説がありました。企業でも政権与党との良好な関係を求めており、党員数が多いことも相まって中国社会の基礎となっているようです。続いて高齢化に対する政府の対応について解説があり、1980年代には「政府が老後を養う」としていたものが、1990年代には「政府が老後を助けよう」、2000年代になると「政府を頼るべからず」に変遷し、2010年台には「自分で老後を養おう」と大きく変わってきているそうです。また就活で苦労する大学生が「網格員」としてグリッドマネジメントを担い、コロナ禍に伴う先端IT技術の普及も相まって徹底した監視社会が進んでいる半面、プライバシーを犠牲にしてでも利便性や安全性を求める流れも見て取れるとのことでした。
質疑応答では、格付けが高くない大学を卒業した人たちのモチベーション、反日活動の現状、現実の中国を読み解く参考書、社会主義と共産主義の違い、民主化の可能性など様々な視点での質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。
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