5月16日、株式会社 東京・森と市庭(いちば)菅原 和利氏を講師に迎え、「自分の地域をつくる-ワーク・ライフ・プレイ ミックス-の構想」と題して講義が行われました。本講義は、「事業構想とは何か」のヒントを得ることを目的に各界の事業家を招いて開講されたものです。
講師の菅原和利氏は、大学在学中から環境問題やまちづくりに関心があり、奥多摩町をフィールドワークとしてサークル活動を行っていたことから、同地域に魅力を感じてきたという。Think globally act locallyという行動様式にも触発され、世の中を変えていきたいと考え、大学では好きなことを学んで社会課題を解決し、その結果が持続型社会へつながるという想いから、奥多摩に移住したとのこと。
日本の森林面積は、68%、奥多摩は94%が森林であるがそれを活用されてはいない。一方で、年間100万棟の新築住宅の建設が3分の1にまで減少しており、伐採の適期を迎えても、安価な外国産材などに押されて需要は伸び悩むという林業が成り立たなくなっている時代に直面している。
講師が東京・森と市庭を立ち上げた当初は、事業の出口が見えず、東京都内のオフィスの内装を無垢の素材にし、働く空間の向上やブランディングを図るという仮説目標も上手く成立しなかったという。
「木を暮らしの中に取り入れることは子供たちの五感を研ぎ澄ます」という保育施設園長の言葉をきっかけに、多摩産材を使用した木の遊具を幼稚園、保育園で直接アイディアを相談しながらオーダーメイドで製品化することに取り組み始め、林業の6次産業化としての事業が始まり、「木育」に絞って営業活動を行うことで事業が順調になったという。
東京・森と市庭の中心となる価値観は「木育」。木を子どものころから身近に使っていくことを通じて、人間と森とのかかわりを主体的に考えられる豊かな心を育む新しい概念として位置付けている。木の遊具はオーダーメードで、使われ方を確認して職人が仕上げている。
林業は60年先を見据えて経営する必要があるという。中間コストを省くため所有者を株主にするなどのさまざまな工夫を行っており、端材を使った工作のワークショップや社有林での自然体験会も開いているなど、木育を中心に事業をさらに展開しており、木育市場を全国に広げ、地域の木を地域の子どもたちに届けていきたいと説明された。
「事業を立ち上げるときにはワーク・ライフ・バランスが入り込める余地などなく、全てにコミットしないと良い事業は立上らない」と話された。
22歳に起業した事業は根付かず現在も休眠状態だという。当時は、仕事をしっかり作る意識が低かったという。東京・森と市庭に立ち上げ後も順調に事業が進んだわけではなく、事業内容に余白がなかった。そこで、事業に遊びの要素を入れてみた。遊びを組み合わせるワーク・ライフ・プレイ・ミックスの考え方を取り入れることで事業が軌道に乗ったという。起業時からビジネスモデルを変化させてきたが、ビジネスモデルを続けている起業家はいないという。とにかく現場に出て、お客様は何を考えているのか、そこに執着することが大切だと講義されました。
本講義は、「事業構想事例③」(担当教員:松本祐一教授、履修人数:273名)の授業において行われ、事業構想とは何かのヒントを得ることを目的に各分野の事業家を招いて開講されています。
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