-事業構想論- 多摩地域 優良企業の事業構想 エム・ケー株式会社
多摩大学の「事業構想論*1」(担当教員:松本祐一教授)では、多摩地域で独自のビジネスモデルを展開する企業を招き、その事業構想について学ぶ講義を行っています。2026年6月25日(木)は、多摩信用金庫主催「多摩ブルー・グリーン賞」経営部門で最優秀賞・優秀賞を受賞した実績を持つエム・ケー株式会社より、専務取締役の小林久恵氏と、多摩大学卒業生の梶本凌平氏、織田一宏氏をお迎えしご講演いただきました。
多摩地域だからこそ叶う “戦わない”戦略
エム・ケー株式会社は東京都日野市を拠点に、市街化調整区域での大規模開発を中心とした事業を展開する総合不動産ディベロッパーです。従業員47名というコンパクトな組織ながら、「ともにまちづくりを」をスローガンに、地域とともに価値を創出する独自のビジネスモデルを築いています。
市街化調整区域とは、自然環境や農地を保全しながら計画的な都市形成を進めるため、都市計画法により開発が制限されているエリアです。一般的に生産性が低く、不法投棄禁止の看板が立つような土地も少なくありません。
同社はこうした土地を商業施設や物流拠点、工場用地などへ転換するヘッドリース事業を展開。30年以上にわたり地場不動産として積み重ねてきた実績と信用を強みに、多くの大規模開発プロジェクトを牽引してきました。
大手のディベロッパーが都心開発に注力するなか、日本の国土の3.9%の市街化区域に人口の92%が集中している現状に着目し、郊外のまちづくりに特化する“あえて戦わない戦略”を選択。地権者から土地を借り受け、企業へ転貸する事業モデルは「多摩地域だからこそ可能である」と小林氏は分析します。
他社が参入しにくいニッチな市場を開拓した結果、これまでに50以上の行政と連携。中央区の面積の半分に相当する規模の開発に携わり、企業誘致による税収効果は26億円、1万9000人の雇用創出にもつながっていることが紹介されました。
長期大規模開発を支える経営基盤
ときには15年にも及ぶ長期プロジェクトとなるヘッドリース事業。同社はこれを支える経営基盤として、地域課題解決事業と投資事業を展開しています。
多摩エリアで運営する10の保育園では年間1,200人の待機児童を解消し、13の老人ホームでは1,000人の雇用を生み出すなど、地域が抱える身近な課題の解決にも向き合っています。また、航空機や太陽光発電システムへの投資事業によって、安定した経営体制を構築していることも紹介しました。
小林氏は同社の経営スタイルを「みんなで一緒に畑を耕すような、人間力の塊ともいえるヒューマン経営」と表現。将来的には売上400億円規模の企業を目指しながらも、月平均残業時間は5時間、ノルマなし、個人売上目標なしといった働きやすい環境づくりにも力を入れていると語りました。
卒業生が語る”創造的問題解決”の現場
入社4年目の梶本氏は、在学中に受けた授業で「事業構想とは既存のフレームを破壊するような創造的な問題解決だ」と捉え、その常識にとらわれないクリエイティブな発想は、自分には縁遠い世界だと感じていたといいます。
しかし、市街化調整区域でのまちづくりに携わるなかで、エム・ケーの取り組みこそ、まさにフレームを打ち破り、新たな価値を創出する“創造的問題解決”の実践そのものだと実感。当たり前を疑うことで生まれる新しい価値があることを知ったと語りました。
現在は地権者訪問、行政・企業との打ち合わせ、金融機関との業務提携、企業誘致活動など幅広い業務を担当。地権者や企業からかけられる「ありがとう」の言葉が大きな励みになっていると話します。また、「多摩大学でエム・ケーを知り、この地域の不動産会社で働くことができてよかった」と多摩地域への愛着と仕事への誇りを語りました。
入社3年目の織田氏は、八王子市で9.8ヘクタール(東京ドーム約2個分)に及ぶ土地区画整理事業を担当中。開発に反対する地権者との合意形成に苦労しながらも、工夫を重ねて粘り強く向き合うなかで、「あなたのおかげでまちづくりの完成像が見えてきた」と言われた経験が大きなやりがいとなっていると話しました。
また、若手が目標を宣言し管理職が1対1で伴走する「やりたいこと宣言」制度についても紹介。日々の悩みや課題を上司と共有できる環境が整っており「社員一人ひとりが自分らしく挑戦し、成長できる会社です」と語りました。
“小さな大企業”であり続ける理由
講義の最後には、学生から全国展開の可能性や、企業規模を意図的に小さく保つ理由について質問が寄せられました。
小林氏は「地元に入り込み、対話を重ねることでまちをつくっている。商習慣の異なるエリアで心をつかむことは容易ではないため、現時点での全国展開や事業規模の拡大は考えていない」と説明。
また、少子高齢化が進む多摩地区の未来については、「大規模開発といったハードなまちづくりだけでなく、駅前商店街との交流など地域の方たちとの対話を通じた“ソフトなまちづくり”も不可欠」と強調。さらに不動産市場の変動に備え「データセンターや海外投資などによるリスク分散にも取り組んでいると述べました。
“小さな大企業”として多摩地域に根ざし、その土地の可能性を育てるエム・ケー株式会社の事業構想は、若手総務部の挑戦とともにさらに広がっていきそうです。
エム・ケー株式会社 公式サイトはこちら
*1:多摩大学では事業構想を「世の中の不条理を解消しようとする問題解決行動」と定義し、アイディアが事業構想へ発展するまでのプロセスを重視しています。本授業では、事業構想を理解するための3つのアプローチとして「言葉の意味から考える」「既存理論から考える」「事例から考える」を提示し、春学期は“事例”に焦点を当て、実践者の視点から事業構想の本質を学びます。
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