11月23日、「多摩学Ⅱ」(担当教員:長島剛教授、野坂美穂准教授、履修人数:225名)の授業にゲスト講師としてJA東京中央会(所在地:東京都立川市)都市農業支援部の能城友明様、河合稀一様をお招きし、「多摩圏の都市農業」をテーマにご講演いただきました。
最初に東京の農地の実態について数値を示しながらご説明いただきました。東京には約6,700haの農地(全国の0.15%)があり宅地化される区域である市街化区域に3,800ha、うち生産緑地として法律で守られている農地が3,000haあるそうです。これら東京の農地の農業生産高は年間で303億円にすぎませんが、環境保全、防災、教育、健康、歴史や文化の継承など、多面的機能の価値を合計すると2,500億円にものぼるとのことです。
東京の農産物の多様性は江戸時代に行われた参勤交代に起源を見出すことができ、江戸東京野菜として現代まで引き継がれています。時代が進んで高度経済成長期に入ると、東京への産業、人口集中が進むとともに、都市計画法が制定され農地に高い税金が課されるなど、農地の売却が進み、農家と生活者の対立が顕著となったそうです。しかし昭和後期から平成初期になると、東京の農地に対する見方が大きく変わり、さらに平成後期には、都市農業振興基本法が制定されるなど、都市における農業が持続可能になるよう法律が整備されるに至ったとのことです。
次に、これからの多摩圏の農業の機能と期待についてお話しいただきました。東日本大震災やコロナ禍を経て、都市農業のレクリエーション機能、コミュニティ形成機能、防災機能や災害時の避難先としての機能など、新たな期待が高まっているとのことです。そして社会貢献やまちおこし、人口減や空家問題の解消までも取り込み、都市の貴重な緑である“都市農地”の保全を目的とした「緑農住ガイドライン」が策定され、自治体・企業・学校などあらゆる業界が、東京にある農地に関心を持ち、積極的に活動に取り入れようとするに至っているとのことです。
最後に、「皆さんが社会人、企業人となった時、それぞれの立場でどのように社会貢献し、地域を盛り立てていくかを考えていただきたい。現在でも東京の農地は年間100ha減少し続けており、今後60年で消失してしまうことになる。どうやったら残すことができ共存共栄していけるのか、若い皆さんの力を借りたい。」という言葉で締めくくられました。
学生からは、「今後農地は無くなってしまうのでしょうか?」、「農業のICT化は進んでいるのでしょうか?」、「日本の都市農業は世界からどう見られているのでしょうか?」など質問があり、活発な質疑応答が行われました。
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