11月30日、「ロシア経済論」(担当教員:小林昭菜准教授、履修人数:43名)の授業にゲスト講師として独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構(東京都港区、以下JOGMEC) エネルギー事業本部 調査部 調査課長の原田大輔様をお招きし、「ロシア石油ガス産業概説『前例ない』欧米制裁に苦しむロシアと脱炭素の鍵を握るロシア」をテーマにご講演いただきました。JOGMECは日本のエネルギー安全保障確保の観点から、エネルギー・資源の開発促進、安定的かつ低廉な供給に資する業務を行っています。
最初に、世界的なカーボンニュートラルへの動きとその背景にある課題についてお話いただきました。2020年以降主要国がカーボンニュートラルに大きく舵を切る中、石油・天然ガスに替わるエネルギー源の目途は立っていません。また製造業の存続や貧困問題とも大きく連動しているため、多くの国がカーボンニュートラルの達成時期と掲げる2050年までの30年間こそがこれまで経験したことのない新たなエネルギー政策を立案・実行できるかの重要な時期であるとされました。この視点でのロシアの位置付けとして、環境負荷が比較的低い天然ガスが豊富であること、CO2を地中深く封じ込める地下貯留の実現性が大きいこと、国土の森林面積が広大であるという3つの資産を挙げ、世界最大のポテンシャルを有するものの功を奏するか否かはこれから次第とされました。
続いて、資源大国であるロシアが抱える8つの課題についてお話しいただきました。具体的には、①原油価格が国家財政を左右していること、②ロシアの原油生産量自体が減退してきていること、③ロシアの石油ガス産業に国営・民営プレーヤーが混在し利害関係が複雑であること、④供給ルートが多様化する中での市場確保手段、⑤世界最大の領土を持つが故のインフラ維持と輸送コスト増大、⑥したたかな中国市場への対応、⑦欧米による対ロ制裁対応、⑧OPECプラスによる史上最大の能動的減産をあげられました。
最後に、「2022年からのロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う欧米による制裁発動により、今こそロシアは弱体化している。戦後を見通すとチャンスが生まれつつあるとも言える。あえてこの時期に『ロシア経済論』を履修しロシアに関心を持つ学生の皆さんには、好機を逃さずに国益という視点で何が出来るかを是非考えて欲しい」とうったえかけられました。
質疑応答では、CO2貯留の手法と漏れの確認の必要性、針葉樹と広葉樹のCO2吸収量の差、欧米の制裁が及ぼす北極海での原油採掘やシェールガス採掘への影響、ウクライナ戦争終結後のEUや中国の原油購入意欲、など多岐に渡る質問があり、活発な議論が行われました。
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