12月8日、「ロシア経済論」(担当教員:小林昭菜准教授、履修人数:28名)の授業にゲスト講師として独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(所在地:東京都港区 以下JOGMEC)の原田大輔様をお招きし、「ロシア石油ガス産業概説」のテーマでご講演いただきました。JOGMECは日本のエネルギー安全保障確保の観点から、エネルギー・資源の開発促進、安定的かつ低廉な供給に資する業務を行っています。
最初に、現在世界的に進む脱炭素の潮流についてご説明いただきました。8割の国が脱炭素に舵を切った中でも石油や天然ガスは、温暖化問題は残るものの人類存亡に不可欠なエネルギー源であることに変わりなく、生活様式自体の大きな変革が無くてはCO2排出量目標に達しないとのことです。一方でロシアはカーボンニュートラルを目指す上で3つのポテンシャルがあるとされ、環境負荷の低い天然ガスの埋蔵量が莫大であること、CO2の地下貯留能力が高い事、広大なCO2を吸収する森林がある事を挙げられました。加えて、これらのポテンシャルはウクライナ戦争が終結した暁には大きなビジネスチャンスに繋がるのではないかとのことでした。
次に、ロシアが抱える課題をご紹介いただきました。具体的には、ロシアの国家財政が石油ガス産業に依存し過ぎていること、石油ガス生産量を維持、増強するためには新規に油田開発投資が必要であること、石油ガスの供給ルートの多様化に釣り合う市場を確保しなければならないこと、広い領土に分布する油田やパイプラインといったインフラの維持に莫大なコストがかかること、欧州市場の代替としての中国市場との付き合い方、ウクライナ侵攻に伴う欧米からの制裁等が相当するとのことです。
最後に、現時点では日露協力が推進できるような環境にはないが、将来を見据えて日本のエネルギー安全保障及び国益に利するロシアとの関係を常に念頭に置きながら、長期的視点での2050年の脱炭素目標を見据えた政策が求められていると締めくくられました。
学生からは、「油田は枯渇すると言われ続けているが、いまだに生産できているのは何故ですか?」、「北極圏は石油ガスの生産地としてのポテンシャルは高いのですか?」、「生産地毎に油種が異なると調達先としてどこでも良いと言う訳にはいかないのではないですか?」、「温暖化に伴いロシアでの油田開発が困難になるのはなぜですか?」など、活発な質疑が行われました。
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