8月18日、多摩市公民館大会議室にて開催された第15回地球大学院(旧:関戸地球大学院)に、経営情報学部の小林昭菜准教授が登壇し、「ロシアからみたウクライナ問題」と題した講演が行われました。
地球大学院では、多摩市内6大学の教員による市民へ向けた幅広い分野の講座を開講しており、令和6年度は例年1部制であった講座を2部制とし、第1部を「平和」をテーマにして開催されました。
小林准教授は、ロシア、ソ連を専門とする国際問題の研究家としての視点から、ウクライナ問題について解説が行われました。
なお、当日の講演は、会場とZoomでのハイブリッド開催で行われました。
ロシア国内では、ウクライナの状況を懸念する人たちが多くいます。独立系の世論調査によれば、毎月一定数の国民が注目していることが示されています。
ウクライナの問題には、複雑な歴史と地政学的構造が反映されているといいます。
大ロシア(ロシア)、白ロシア(ベラルーシ)とともに東スラヴ族に属していた小ロシア(ウクライナ)は、13世紀のモンゴルの襲来以降、ポーランド、ロシアなどの支配下にあり、東西で別個のナショナリズムが発展し、東西の対立構造が1991年の独立以降、大きな影響を与えているとのことです。
ロシアとウクライナは言語、宗教、文化の親近性があり、ロシア語とウクライナ語の関係は、日本語と沖縄の「方言」よりも近いといいます。
ウクライナではウクライナ語とロシア語のバイリンガルが多く、状況によって使い分けていましたが、戦争の影響で最近ウクライナではウクライナ語が主流となっています。
今はそれぞれ一つの国民国家ですが、ウクライナ人、ロシア人という考え方は、ソ連時代にはなく、ロシア人とウクライナ人との結婚は多く区別することが難しい状況であり、二項対立で割り切れない、近しい存在であることから、この戦争は「骨肉の争い」のようなものとなっているといいます。
現在は反ロシアで統一され一体になっていますが、今後も反ロシアで統一された形で行くのか、ウクライナのアイデンティティ探しが現在の抱える課題だと説明されました。
ロシアとウクライナの戦争は、今後100年以上にわたって両国の間に禍根を残す修復不可能なレベルであり、長期化すると予想されますが、ウクライナ側からの視点だけではなく、ロシア市民のさまざまな声にも耳を傾け、記録として残し、この戦争を読み解くことも大切だといわれました。
どんな未来を作りたいか、どういう未来を若い世代に残していきたいかということを考えるために、「現在と過去との対話」がより一層求められると締めくくられました。
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