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いちょう塾一般講座 高橋准教授

講座名:「江戸時代の庶民教育と儒学思想」

5月23日、八王子学園都市大学 いちょう塾において、本学経営情報学部 高橋恭寛准教授による一般講座が開催されました。

儒学は、江戸時代の実学として知られており、江戸後期には、幕府の官学として武家に浸透しました。一方で、石門心学などの例の他、庶民の学問としての儒教思想はほとんど普及しなかったといわれています。

本講座では、儒学の庶民層への学問的な拡がりや思想としての儒学の庶民階層への浸透の様相について、江戸時代の識字率と寺子屋教育の内容から普及の実態を解説されました。

一般的に江戸時代の識字率は高かったと言われていますが、実際のところ、各地の識字率が分かるデータの取得は困難という。明治時代の識字率の1次資料の文献からわかることは、明治初頭においても実用的な読み書きができる割合は25%程度と推定され、逆算すれば、江戸末期では、文章が読解できる程度はかなり低いことが推測されるという研究成果が紹介されました。識字率のデータから推測されることは、江戸時代において地域や身分によって教育格差の存在がわかり、庶民教育もまた都市部を中心にしたものであったことが推察されるとのこと。

寺子屋教育が識字率の底上げに繋がったといわれています。寺子屋教育に用いられたテキストに「往来物」があります。往来物は、「手習い教科書」として使用され、その内容は、知的好奇心を満たすとともに、実務的な学びを提供するものでした。ただし、儒学思想教育という観点では、往来物が基本的には実用書であるため、儒教の道徳思想に関する議論の深まりは見られず、寺子屋教育と往来物における儒学思想の広がりは、限定的であったといいます。また、寺子屋教本としては用いられたものに『実語教』というテキストがあり、通俗道徳書として用いられ、仏典、儒書(漢字)などの文言によって構成されていいます。実語教には注釈書が多く存在しているが、とりわけ人間関係の道徳を説く箇所に儒学経典を参考テキストとして活用しており、人間関係の道徳として儒学があることは理解されていたといいます。

実語教の内容からわかるように、庶民教育において漢文を主体として儒学道徳を学ぶという学問としての儒学はハードルが高いものであり、実用が第一として扱われた庶民においては儒学の学問としての普及は低かったという解釈を示されました。

庶民教育の普及は社会・国家レベルで捉えれば、教育水準を底上げすることにつながるものであり、国の活力を支える重要な要素となるもので、本講義においては、江戸時代の庶民教育の実態を理解することで、その時代の学問の役割と社会の成熟の関係について暗示を得ることができる講義となりました。

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