11月23日、「事業構想最新事情」(担当教員:長島剛教授、履修人数:271名)の授業にゲスト講師として株式会社三菱総合研究所(東京都千代田区、以下MRI) 地域・コミュニティ事業本部 主任研究員の田口友子様をお招きし、「地域通貨を通じて実現する、地域の未来~人口減少下で、地域が持続していくために~」をテーマにご講演いただきました。
最初に日本の人口推移と高齢化のデータから、様々なサービス業の撤退、行政コストの増加、自治体の消滅など人口減少で懸念される負のスパイラルについてご説明いただきました。公共投資を増やしても域内循環率が低いと効果は限定的で地域は豊かにならないとされ、負のスパイラルから脱却するためには地域にある様々な資源(資金、人、空間・文化、データ等)を活用して域内循環を高める「地域経営」の発想が必要とされました。
続いて、域内循環を高める取り組みの一つとしてMRIが開発を進めているデジタル地域通貨「Region RingⓇ」についてご説明いただきました。「地域通貨」とは特定の地域やコミュニティでしか利用できない通貨で、これまでコスト、効果測定、インセンティブ等の面で定着が難しいといわれてきたそうですが、近年のITの進展を背景に、地域活性化の一施策として再び注目を集めているそうです。特にスマートフォンアプリを使ったデジタル地域通貨では、地域内での新しいコミュニケーションの創出や、取引データの分析による効果の定量評価など、今後も活用場面が広がることが期待されているそうです。MRIでは2017年度に地域通貨の実証を開始し、2021年3月に「Region RingⓇ」を正式発表。運用中の事例として名古屋市金シャチマネーやACT5メンバーポイントをご紹介いただきました。
最後に、今後の事業展開に向けてお話いただきました。昨今、様々な地域で国からの経済対策給付等を活用して「地域通貨」を称する事例が増加していますが、その多くは使い切り型の商品券やポイントであり、地域内で転々と流通していくことが可能な本当の意味での地域通貨の導入はごく一部に留まっています。地域通貨の実現には法的な課題や技術的な課題の解決に加えて、広く普及させるための導入メリットの明確化、持続的な運用を可能とするための民間資金の活用等、様々なハードルがあり、MRIではそうした課題の解決に向けて取り組んでいるとのことです。
発表の最後には、地域経営を実現した地域の未来像として、城下町をハブに、生活・経済圏内に立地する様々な地域資源をネットワークでつなぐ自律的な地域経営の仕組み「21世紀型藩」についてご紹介いただきました。
質疑応答では、「地域循環率を高めるために学生としてできることはありますか?」「地域通貨の資金源は国と地域のどちらがあるべき姿でしょうか?」「地域通貨流通の障害となるものは何でしょうか?」など質問があり、活発な意見交換が行われました。
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